2007年2月28日水曜日

ピアノ自慢

昨年の12月、自分のために、がんばってピアノを買いました。
オーストリア、ウィーンに1910年に誕生したピアノーメーカー、Wendl&Lung社のアップライト。

 88鍵
 ウォールナット艶出し仕上げ
 ドイツ レスローワイヤー
 独フェルトハンマー

 木目もきれいな一枚板で仕上げられた、美しい猫足の、新品のアップライト。高さは115cm、幅は58cm。色は茶色。
 こう書くと、何やらとても高級感の漂うオーストリア製ピアノという感じがしますが、実はこのピアノ、地元の中古ピアノ販売店の激安チラシにのっていた目玉商品で、どういうわけか某国産の中古ピアノの上級モデルよりもずいぶん値段が安かった!!!

 ドイツのピアノというと、Boesendorfer, Bechstein, Steinwayに代表される名器が思い出されますが、Wendl&Lungはこれまで聞いたことがありませんでした。早速調べてみると、ウィーンに1910年に作られた、現在4代目Peter Veletzky氏が率いる老舗。彼の祖母は、19世紀にあって、女性としてオーストリアで二人目にピアノ製造のマイスターの資格を取ったStefanie Veletzky。2005年にはデンマーク王室にグランドピアノを献上。きれいなウィーンの店舗Klaviergallerie Wendl&Lungでは、展示されているピアノを使って小さなコンサートも開けるそうです。興味深いのは、Veletzky氏率いる24人のスタッフの国籍が様々なこと。日本人、韓国人、中国人の三人の美女と、それぞれ平均六カ国語を話す感じのよさそうな東欧出身者にオーストリア人。東欧とヨーロッパの境に位置するウィーンならでの、国際的な顔ぶれです。ピアノ運び専門職人の筋骨隆隆なおじさん三人だけ、使用言語:「ウィーン語」とあります。先見の明があるこの四代目社長は、1999年自ら中国に乗り込み、中国に工場を設立し、「euroasiatisch」なピアノを生産中。高品質でリーズナブルなピアノを積極的に販売中で、販売店をサイトで探すと、さながら仮想世界旅行が楽しめます。ドイツ、オランダ、北欧、東欧、イギリス、中国、韓国等で扱われていて、ヨーロッパでは、アップライトが平均2000ユーロ以上で取引されているので、円に換算すると日本では高めの価格設定といえるでしょう。明らかにこれはご当地ヨーロッパでもピアノ販売業界に価格破壊を起こしていると思われます。
 今月の22日付の新聞で、国内最大ピアノ大手メーカーが、少子化で販売台数を減らし、更に世界的な競争を生き残るために、上級モデルを「産地」品として売りに出たという記事がありました。シャープの最新鋭液晶テレビ「亀山」モデルに続いて、工業製品に産地名をつけることで、他との差別化を図るのだそうです。この記事からも改めて分るように、まさに日本のピアノ作りのコンセプトは、木の箱に入った工業製品なのですね。性能という点では、日本車と同様、世界トップクラスです。ピアノは「工業製品」なので、中の部品には確かに耐久性、性能に大きな差があります。しかし、素人が演奏を楽しむには、合板の箱に入った優秀な工業製品よりも、しっかりした一枚板でできている楽器の方が「響き」を楽しめる気がします。国産ピアノのアップライトは、住環境にあわせてグランドピアノを代用させるという目的があるため、音を大きく、華やかにするために、背中の響板の面積が大きい、つまり背の高いものほど上級モデルとなります。必然的に木を沢山使わなければならない。しかも、世界最高級ピアノのBoesendorfer社の生産台数と比べると100倍近いので、一枚板を使用したらコストが高騰して、安く高品質の「made in Japan」が崩れてしまうのでしょう。でもドイツ従来のアップライトピアノは、(御三家はそれぞれ全く違うコンセプトで製造されている)、一般的にもともと背が低いのがスタンダードであり、そのかわり、外の木のボディーがしっかりしていて、響板だけではなく、ピアノ全体に音が反響するので、国産よりも柔らかい音がします。
Wendl&Lungのアップライトも、従来のヨーロッパ型をきちんと踏襲しており、この価格帯のピアノとしては小型でも明るく温かい音色がして、嫌がる娘たちを道連れにしたアンサンブルを楽しむには十分です。
 それにしても、どこの国のピアノ販売のサイトを覗いても、ピアノのためにある一定の「気品」が演出されているのに、日本ではピアノは激安チラシに「産地特売品」・・・もうほとんどマグロの叩き売り状態。それだけ身近に取引きされているということでしょうか。

A.A

2007年2月21日水曜日

ドイツと言えば・・・

 ドイツと聞いて連想するものと言えば、メカニックなものを連想する人が多いのではないでしょうか。たとえば、理系の大学生が第二外国語としてドイツ語を選択する割合が比較的高いと言われるのも、そこに一因があると思われます。
 特にドイツの場合、自動車と並んで「メカ好きを刺激するアイテムは、光学機器。イエノプティークの伝統・カール・ツァイスと言えば、知る人ぞ知る、顕微鏡からプラネタリウムまで名だたるドイツの光学メーカーであります。そしてカメラ。とくれば、ライツ社のカメラ、誰もが知ってるライカでございます。このブログを読んでいる人の年齢層は定かではありませんが、とある年代の人には、たまらない魅力を持ったその名前。自分はその年代にはいるとは思えない若輩ですが、「メカ好き」を自称する以上、やはり一度は手にしてみたい。
 ドイツ語学科の教員にもカメラが趣味という人がいますが、胸にライカをぶら下げた本学科教員の姿など未だ見たことはありません。実は持っているのだけれど、照れがあって人前に出せないなんてこともあるかもしれません。僕もカメラ好きですが、ライカは正真正銘持っていません。奥深い世界があるようで、レンズや部品を揃えれば家計が毀れると聞いてます。実際、僕には先立つものがございません。中古カメラ店のショーケースを覗くのがせいぜいですが、逆にそれで妄想は広がるようで、ああ早くこの煩悩から離れて悟りの境地に入りたい--、とは裏腹。やはり欲しいのでした。さてこの葛藤はどうなることでしょう、と今回の話はこれまで。ちなみに写真はライカ「M3」です。うーん、やはり美しい。
(T・K)

2007年2月16日金曜日

Esskultur im deutschsprachigen Raum

Spezialitäten aus Süddeutschland: 1. Kuchen

Besonders bekannt sind in Deutschland die leckeren Kuchen und Torten. Man isst sie nicht als Dessert, sondern eher nachmittags zum Kaffee (kann auch Tee oder Kakao sein) in recht großen Stücken.

Eine Spezialität, die aus Österreich kommt, aber besonders in Süddeutschland weit verbreitet ist, ist Apfelstrudel. Am besten schmeckt er aus den frischen Äpfeln im Herbst während der Apfelernte aus dem eigenen Garten. Die Äpfel sollten etwas säuerlich sein, man kann die „nicht so schönen Äpfel“ verwenden, die zum Essen nicht so lecker sind.

Zutaten
etwa 1 kg Äpfel, geschält und in Stifte geschnitten
50 g zerlassene Butter
ca. 50 g Rosinen
eine Tasse grob gemahlene Haselnüsse oder gehackte Mandeln
etwas Zimt
100 g Zucker
etwas Puderzucker

Zubereitung
Den gekauften Strudelteig (es geht auch mit Blätterteig) ganz dünn ausrollen oder ziehen. Er sollte ca. 30 x 30 cm sein.
Rosinen, Nüsse oder Mandeln, Zucker mit den Äpfeln mischen.

Die Butter schmelzen und mit einem Backpinsel die Hälfte davon auf den Teig streichen,
die Apfel-Mischung und auf dem Teig verteilen, an den Seiten jeweils 3 cm freilassen.
Die Teigränder umschlagen und von der langen Seite her beginnen, den Strudel aufzurollen. Die Enden zusammendrücken (wie 餃子).
45-55 Minuten bei 180 - 200 Grad im Ofen backen – bis der Teig hellbraun ist. Dabei mit der restlichen Butter bestreichen und am Schluss mit Puderzucker bestreuen.

Man isst den Apfelstrudel noch warm, mit Schlagsahne oder Vanillesoße oder Vanilleeis.

Guten Appetit!



Apfelstrudel
mit
Sahne



A.W.

2007年2月15日木曜日

クラウスの独り言 2

 昨日いつもの散歩から帰ると、僕の連れはワインを飲み始めました。前にも書いたとおり、彼はワイン、特にドイツワインが好きなのです。僕自身はお酒が まったく飲めないものですから、そのおいしさはよくわかりません。でも彼が言うところでは、ドイツの葡萄酒、つまりワインは格別なのだそうです。  ヨーロッパのワインはフランス、イタリア、スペインを始めハンガリー、ギリシャなどたくさんの産地がありますが、なぜドイツワインが格別においしいのか と不思議に思っていましたら、食後ゆっくり寝そべっていた僕のところへ、上機嫌の彼がやってきて、少し酩酊口調で言うのです。
 「ねぇ、クラウ ス、ドイツワインはね、やわらかい日差しをゆっくり長い時間をかけて浴びるからおいしいんだよ。だってね、ドイツ中部のシュットゥットガ ルトの平均気温は年間で最低気温6度から最高気温12度くらいなのさ。だから日差しの強いイタリアやフランスでできる葡萄(ぶどう)と比べてやさしくて、 穏やかなんだよ。」
下の写真は彼がこの前ドイツに行ったときにとってきたブドウ畑の写真です。
ワインのおいしさについては、また今度聞いたらお話しますね。


(ドイツ中部Weinsbergのブドウ畑)

クラウス

2007年2月9日金曜日

外国語学部総合講座(2006年度秋学期)をふりかえって

 2006年度秋学期の外国語学部総合講座のコーディネータを担当させていただきました。講座全体のテーマは「ヨーロッパの都市や地域と音楽」。オムニバス形式の全12回の講座で、下記のような内容で行いました。

(敬称略)
第1回「ヴェネツィア」(木村佐千子)
第2回「ヨーロッパのヴァイオリン音楽」(お話とヴァイオリン演奏:樋口ゆみ=獨協大学ドイツ語学科卒業生)
第3回「ヴィーン」(木村佐千子)
第4回「ドレスデン」(キルステン・バイスヴェンガー)
第5回「ヴァイマル」(木村佐千子)
第6回「ベルリン」(渡部重美)
第7回「パリ」(松橋麻利)
第8回「デュッセルドルフとハンブルク~~ハイネ=シューマン没後150年に寄せて」(下川浩)
第9回「スペイン」(木村佐千子)
第10回「ライプツィヒ」(角倉一朗=東京芸術大学名誉教授)
第11回「ペテルブルク~~ロシアにおける西洋音楽の導入と西洋音楽のロシア化」(お話とピアノ演奏:岡田敦子=東京音楽大学教授)
第12回「ロンドン」(木村佐千子)

(第11回、岡田敦子先生の演奏、小講堂にて)

 ドイツ語学科・フランス語学科の先生方や3名の学外講師の先生方にもご講義いただき、盛り沢山の内容となりました。講師の先生のご専門やご関心の方向に沿って、様々な切り口で都市と音楽についてお話しいただき、DVDで都市の映像を見たり、CD等で音楽を聴いたりすることもでき、毎回立ちあわせていただいた私にとってもとても楽しい講座でした。受講生のみなさんには毎回感想を書いてもらいましたが、教室が定員ギリギリでやや狭かったことを除いては、非常にポジティヴな反応が多かったように思います。一週間のうちでこの授業を一番楽しみにしていると書いてくれた人も複数いました。
 特に好評だったのは、生演奏を小講堂で聴くことのできた第2回と第11回でした。はじめて生でヴァイオリンやピアノの演奏を聴いたという方も少なからずいて、美しい楽器の音色、見事な演奏テクニック、すばらしい音楽表現などを満喫してもらえたようです。演奏者ご自身が分かりやすい説明を加えてくださったことで、一層楽しめたのではないでしょうか。ぜひまた授業のなかで生演奏を、という声をたくさんいただきました。通常の授業では予算の関係でなかなか難しいのですが、機会があればまた企画したいと思います。


S.K

2007年2月8日木曜日

富川久美子さんが『ドイツの農村政策と農家民宿』を出版しました

 ドイツ語学科卒業生(1996年卒業)の富川 久美子(とみかわ くみこ)さんが、著書『ドイツの農村政策と農家民宿』(出版社: 農林統計協会)を出版しました。歴史的背景や理論だけでなく、フィールド2例も細かく報告されていて、なかなかの力作です。

興味のある方は、Amazon7&Yビーケーワンなどで購入することが出来ます。

【内容】
 ドイツの農家民宿は1970年代以降発展したが、発展期を経た地域を対象とした研究はみられない。本研究の目的は、今日もっとも農家民宿が発展しているドイツを取り上げ、農家民宿の発展における背景としての国家政策を明らかにし、さらに農家民宿とその地域における政策の影響と具現化を検証することであった。農家民宿は、農村における環境を保全し,観光による地域の活性化や社会的効果も期待できる。しかし、そこには農家民宿の推進策が不可欠であり、農家民宿が成熟期を経た地域と、近年の農家民宿の展開が図られる農村地域では,異なる政策が求められる。


【要約】
 日本におけるグリーン・ツーリズムの推進は、ドイツの「農家で休暇を」政策を先行例としながらも、経済的な意味での農家民宿の観光利用が先行している。現状では、本来のドイツの政策理念である、農家民宿による環境保全への配慮が欠けている。
 本研究の目的は、今日もっとも農家民宿が発展しているドイツを取り上げ、農家民宿の発展における背景としての国家政策を明らかにし、さらに農家民宿とその地域における政策の影響と具現化を検証することであった。
 本書では、事例研究地としてバイエルン州、さらに州内の事例地域として、農家民宿の発展段階が異なる二つの地域バート・ヒンデラングBad HindelangとバイセンシュタットWeißenstadtを選定した。
 本書によって主に明らかになった点は、第一に、ドイツにおける「農家で休暇」の発展過程である。農家民宿の始まりは17世紀であり、1960年代後半から1970年代初めに農家民宿が増加し、その後,1990年代は「第二のブーム期」を迎えた。第二に、農業と観光の政策の下において、農家民宿が発展し、またそれが地域的に拡大した。とくに1990年以降の農業政策は,特定地域における農家民宿の発展を促したといえる。第三に、農家民宿の発展における休暇制度の意味であるドイツでは、1800年代末以降の有給休暇制度や休暇法の制定を契機に休暇が人々に拡がり、とくに安価な宿泊施設を求める人々の農家民宿滞在を増加させた。第四に、農家民宿地域における近年の動向と「農家で休暇を」政策の影響である成熟期にある農家民宿地域は、農家民宿の経営者が離農し、民宿の専業化が進行している中で、農家民宿の維持とともに前提条件である農業の維持が実現されている。この中で農家民宿は,貨部屋から貸別荘への移行が顕著であり、貸部屋、貸別荘、そしてそれらの併設の3類型への経営分化が確認された。一方、発展期にある農家民宿地域は,従来に比較して、大規模で、設備の揃った民宿を新築する傾向にある。このような新築の傾向と経営戦略は、政策による影響を多大に受けていることは明らかであるが、民宿開業のための補助金支給の制度は必ずしも効果的ではない。第五に、地域の環境保全において農家民宿は大きな意義がある。農家民宿地域では、農家数は漸減に過ぎず、農林地面積は拡大傾向にさえある。
 本研究を通じていえることは、農村観光地では,観光資源としての農業維持は、地域にとってもっとも大きな課題であり、農家民宿はその象徴である。農家民宿は、農村における環境保全に重要な役割を担うだけでなく、地域の観光発展の牽引役となる可能性があるが、そこには農家民宿の推進策や地域における環境保全に向けた政策も不可欠である。また、観光化が進展した農村地域と、進展していない地域では、異なる政策が求められる。

【著者コメント】
 私は、獨協大学外国語学部ドイツ語学科1996年度の卒業生です。獨協大学には、社会人を経て入学しましたので、先生方にはとてもよくして頂きました。今でも大串先生をはじめ、獨協時代にお世話になった先生方とお付き合いさせていただき、母校としてとても身近に感じています。独協大学卒業後は、立教大学大学院観光学研究科に進学し、修士、博士とドイツに関する研究を続けてきました。今回出版した『ドイツの農村政策と農家民宿』は博士論文を基にしたものです。内容としては、面白いものではありませんが、ドイツは観光の先進国であり、こんな研究もあることを参考にしていただければ幸いです。