2008年9月16日火曜日

ライオネル・ファイニンガー展 〜ドイツのアメリカ人〜

 ライオネル・ファイニンガー 『緑の橋』1909年 個人蔵



横須賀美術館において8月2日(土)から10月5日(日)までライオネル・ファイニンガー Lyonel Feininger  (1871-1956)の展覧会が開かれています。ドイツ系アメリカ人であるファイニンガーは版画工房の教師としてバウハウスで活躍した画家・版画家で、カンディンスキー、クレー、ヤウレンスキー、マッケ等と並ぶドイツのアヴァンギャルドを代表する作家です。
 今回の展覧会は、イラストレーターとして活躍した1906年の『シカゴ・サンデー・トリビューン』紙の漫画二十五点の展示に始まり、1907年頃の初期の版画と油彩画、未来派に影響を受けた時代の作品、キュビズムに影響された作品、バウハウス時代、1923-1935年のバルト海の風景シリーズ、晩年のニューヨーク時代と、実に幅広い時代の作品を概観することができます。また三人の息子たちに作った木製玩具も展示されていました。
 
 今回の展示で特に素晴らしいのは油彩画です!中でも1920-30年代の海をモティーフとした油彩画の光と影の表現は絶妙で、カスパール・ダーヴィット・フリードリヒを彷彿とさせながらも、全く新しい視点から風景が描かれています。特に印象深かったのは1923年の『海にかかる雲II』(プライベート・コレクション)という小品。海を表す暗い水平の帯の上に取られた空のスペースは明るい緑から黄色に向かう薄塗りのグラデーションで幾何学的に分割され、広大な空間的広がりを感じさせます。「雲」といいながら極めて建築的な空間表現が斬新でした。

 横須賀美術館は展示スペースの合間から正面に海が見える開放的な展示空間で、今回は光と影、海と船を好んでモティーフとしたファイニンガーの作品と展示空間の幸運な出会いがあると言えるでしょう。松原団地から電車で浦賀駅まで二時間。そこからバスに乗らなければ辿りつかない場所ではありますが、帰りに道路を隔てて向かい側にあるSPAに入って温泉につかりながら海を見れば、いい一日だったと満足できるはず!ぜひ週末にでも冒険してみて下さい!!!
A. A